質問:こどもの絵のほめ方がわかりません。

こどもの「つくる」に関するお悩みに、楽しい図工のスペシャリスト辻政博(ひつじ先生)がお答えします。

Q:こどもが描いた絵を、どうやってほめれば良いでしょうか。

こどもが何を絵に描いたのかわからないこともあり、どう反応したらいいのかいつも悩んでいます。こどもへの声のかけ方を教えてください。


A:結果としての絵よりも、描く行為自体を認めましょう。

こどもが描いた絵を見せてきたとき、完成した絵や、技術をほめるのではなく、絵を通してその子の様子をみてあげることが大切だと思います。こどもはそばにいる人に認められることで、自分のやっていることや存在を確認しているところがあります。だからこそ、まず、絵を描くこと自体を認めてあげる。こどもは、同意して認めてあげることで安心して、自信が出てくるのです。そして、発達の過程に即してこどもの絵があることも知っておいてほしいポイントです。

成長とともに変わる絵、それぞれの段階でのほめ方

3歳以前のこどもが描くのは、表現ではなく行為です。イメージを描いているのではなく、クレヨンや絵の具で画用紙の上を探検、探索しているんですね。だから、描いた絵を見て「何を描いたの?」と聞いても、その子はまだその段階に達していないので答えられないと思います。

こどもには絵筆やクレヨンを紙の上で動かしたら線が残るのが驚きなんです。次もやってみたらまた線が残る。その積み重ねが描く行為につながっていきます。線のリズムやいきおいなど、こどもが感じている描くこと自体の楽しさ、おもしろさに共感できるといいですね。 次に、円をコントロールできるようになってきます。そして、ある日はっきりとした閉じた円を描くようになります。その頃には言葉も発達しているので、円を見て「ママ」などと名付けることもあるでしょう。自分の手で描いた形(図)と背景(地)が区別されて、イメージが立ち上がるんですね。これはこどもにとって、ものすごく革命的な大発見なのです。


 

そして、成長とともにいろいろな経験をして、自分の経験を絵の中に詰め込んでいきます。自分の経験したことをほかの人に伝えたいという気持ちも生まれます。その伝えたい気持ちをそのまま肯定し認めてあげればよいと思います。「ぼくゾウさん、描いたんだよ」「そうだね、ゾウさん、描いたんだね〜」という風に。そして、だんだんと、絵を見ながらお話しもできるようになってくると思います。


 

こどもにとって、表現は、自分が生きている生活の一部です。芸術的な行為をしているというより、自分が生きている生活の中の表現としてみてあげるのが大事だと思いますね。

上手か下手かでは見ない

僕はこどもの絵をみて「上手いね」とは言いません。上手、下手で絵をみてしまうのは、こどもの外側に価値基準があって、それに対して上手いか下手かということですよね。楽しんで描いた絵を自分とは関係のない基準で評価されたら、こどもは嫌になりますよ。

図工教師だった頃は、こどもの側に寄っていって「おっ!」と言うだけでした。そうするとニヤっと笑う子や、説明してくれる子もいて、みんな「先生はわかってくれているんだ」とわかるんですね。いろいろと苦労して言葉をひねり出すより、「おお!」とか「うんうん」というだけでOK。あとは、「おもしろいね」とか、「いい感じだね」。それだけでこどものほうから話してくれるようになりますよ。

普段の様子は、絵に出てきます。ちょっとつまずきがあったとか、逆にすごくがんばって山を越えたこととか・・・そういうことをちゃんと見ていてあげる。「キミが生きていることを僕(わたし)はみているよ」ということが大切なんですね。


 

成長の過程として捉えることも大切です。たった1枚の絵で判断するのではなく、その子が乗り越えたこと、できるようになったことをみつけて、ほめてあげてください。

でも、忘れないでほしいのは、こどもは行ったり来たりするということです。前に進むだけではなく、退行することもあるのです。色をぬるだけで感覚を楽しむこともあるし、嫌なことがあったときには、なぐり描きをしてストレスを解消することもあります。そういうときは絵だけでなく、こども自身の様子をよくみてあげてほしいと思います。

PROFILE
辻 政博先⽣ つじ まさひろ

帝京⼤学教育学部准教授。元東京都図画⼯作研究会会⻑。公⽴⼩学校で図⼯専科教員として30年間勤務。⾃分で、感じて、考えて、表現する、楽しい図⼯を目指している。NHK Eテレ「キミなら何つくる?」番組委員(H25〜27)など多くの活動に参加。また『図⼯のきほん⼤図鑑材料・道具から表現⽅法まで』(PHP研究所)など著書多数。ズッコファミリアではこどもの造形活動に関して保護者が抱える悩みや疑問を⼀緒に考えていきます。

写真/大崎えりや 取材・文/伊部玉紀

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