パンケーキと積み木、そして「ごちそうさま」まで

「ジジと、孫と、成長と。」は、芸術学博士の奥村高明先生が、初孫の成長を見つめながら、気づいたことや、感じたことを思いのままに綴るコラムです。今回は幼児の「造形」と「会話」について。

「造形」は「会話」のように…

「名前を書くのと、アンパンマンを描くのは同時に起きます」。娘の成長を見守っている友人が教えてくれました(※1)。幼児の中で、絵を描く能力と、文字を書く能力が全く違っているわけではないので「そうだろうな」と思いました。

私の孫は、しばらく「ジジ」「ママ」など単語だけをしゃべっていましたが、2歳と4カ月を過ぎた頃から、「ジジ、帰らない!」「ジジ、電車、一緒、乗ったね」など2、3語ぐらい言葉が続くようになりました。文法っぽい感じです。ということは「造形」もそうなっているはずです。

 

2歳4ヶ月の孫の「造形」です。


三角コーンにボールを入れて「アイス…」、「アイス運んでる」と言っています。次に、ボールと三角コーンをつなげました。それが電車に変わります。「電車」、「連結〜」、「ボール運んでる〜」とおしゃべりをしています。

 

電車が連結してボールを運んでいるという「造形」です。文法のように、3つつながって、意味のあるものになっています。ジジは嬉しいのですが、母親は「せっかく体操教室に来たんだけど、ボール投げてないし…」と泣いています。

 

「会話」には、ターンがあります(※2)。Aさんが話し、次にBさんが話す。その繰り返しです。幼児の「造形」にも「会話」のようなターンがあります。積み木Aを乗せ、次の積み木Bを乗せる。その繰り返しです。そこに「区切り」があります。


「つくりましょう」と言いながら積み木を重ね、しばらくすると「あ!」。「こ、っかー」「パンケーキ」。

 

積み木を何個も重ねています。これで終わるかなと思っていたら、自分のつくったものを一度確認します。学びの「ひと区切り」です。そして「あ!」と言って、積み木を取りに行きます。

 

続いて、「つくってないが…」と言って緑色の積み木を重ね、「よーし」「よし」と言いながら、緑の積み木を一つ置いて、「パンケーキ」。そしてさらに緑を取りに行き…意味は分かりませんが、どうやらパンケーキのようです。母親の料理をいつも見てるからでしょう。

 

 

積み木をさらに重ねていき、「あー!できたーー!」と満面の笑み。その後…

 

しばらくすると学びの「ひと区切り」がもう一度やってきました。

 

そして「あー!できたーー!」と発言します。とたんに「いただきまーす」と言って、積み木を机から下に落としました。

 

「食べてしまう」ことは「なくなる」こと、理屈はとおっています。残らず積み木を落とした後に、「あーおいしかった」。2分12秒の出来事でした。床が散らかって、また母親は泣いています…。

 

「会話」と「造形」は似ています(※3)。3分後に何を話しているか、何ができているのか予測はつきません。でも、3分後がやってきたときに「ああ…これとこれをしたから、こうなったのか」ということが分かります。

 

これを見守りながら「なるほど」とうなずいたり、行為の中にある「発想」や「工夫」を喜んだり、ジジ業は、なかなか楽しい商売です。



※1:大阪府堺市の藤永泰成先生から教えてもらいました。

※2:ジョージ・サーサス(著)北沢裕・小松栄一(訳)『会話分析の手法』マルジュ社 , 1998

※3:「会話」と「造形」を分けるという考え自体、大人の枠組み。幼児には関係がないのです。

PROFILE
奥村高明 おくむらたかあき

日本体育大学児童スポーツ教育学部教授、芸術学博士(筑波大学)。公⽴⼩中学校教諭、宮崎⼤学附属⼩学校教官、宮崎県⽴美術館学芸員、⽂部科学省教科調査官、聖徳大学教授を経て、2018年より現職。専⾨は図画⼯作・美術教育、鑑賞教育など。『⼦どもの絵の⾒⽅〜⼦どもの世界を鑑賞するまなざし〜』(東洋館出版社)、『美術館活⽤術』(美術出版社)など著書多数。ズッコファミリアでは初孫の成長を見つめながら、慌ただしくも幸せな日々を綴るコラム「ジジと、孫と、成長と。」を連載。

文/奥村高明 イラストレーション/ズッコファミリア編集部

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