【インタビュー】音楽家・青木慶則さん「自分で手を動かすことで、まだ完成されてない世界を完成させることをどんどんやらせてあげたいです」

HARCOとしての活動に区切りをつけ、今年から本名での新たな音楽活動をスタートさせた音楽家の青木慶則さん。妻のQuinkaさんも同じく音楽家であり、ソロユニットQuinka,with a Yawnとして活躍中。そんなお二人のお子さんは絵の具が大好きな3歳の男の子。両親ともに音楽家という環境の中、互いに五感を刺激し合うようなコミュニケーションはどんな風に日常を彩っているのでしょうか?

耳ざわりの良い暮らしの音を音楽に取り入れたい

――青木さんにはズッコペディアの動画のサウンドロゴとBGMを制作していただきました。物づくりのわくわくが伝わってくるような素敵な仕上がりですが、どんなイメージで制作していただきましたか?

 

青木 ネット上の動画はサイズが短くて何度も繰り返して見ると思うので、音楽も繰り返して聴いても飽きないものを意識してつくりました。最初はメロディがなくてもいいかなと思ったんですけど、ついつい付けたくなっちゃうタイプなので(笑)。


 

――いろいろな文房具や紙をクシャッと丸める音などを、普段から音楽に取り入れてライヴや制作をされていますよね。

 

青木 はい。僕はライブでもお客さんの前でホチキスやセロテープを使って音を出して、それをサンプラーという機械に取り込んでリズムにして唄うということをやっています。だからここ10年くらいで何度かレコーディングしてきた文房具の音のストックが既にあって、それに加えて今回のズッコファミリアの動画サウンドの為に新たな音を録音しています。特に今回は、聴いた人がほっこりした気持ちになってくれるといいなと思い、木を使った音を入れたりして。板と板をぶつけてみたり、木を上から床に落とした音なども使っています。

 

――そもそも楽器ではない物を使った音づくりに興味を持ったきっかけは?

 

青木 現代音楽という音楽ジャンルではエキセントリックな音だったり、音楽であって音楽でないような不条理な表現方法があり、20代前半の頃によく聴いていました。現代音楽のひとつの手法で、ミュージック・コンクレートなんて難しい言い方もしますが、昔から街のノイズとかをテープに録音して切り貼りして抽象画を描くみたいに音を組み合わせていくような手法の音楽も好きで。そういうものの多くはビルなど建築物の解体だったり刺激的な音だったりするんですけど、僕は何か違うものがやりたいなと思った時に、耳ざわりの良い暮らしの音を使いたいなと思ったんです。そんな中で文房具の音というのはまだ誰もやってないんじゃないかな?って。なので僕は文房具屋さんに行くと、よく試聴します。


 

――試し書きとかではなく、どんな音が出るか?って(笑)。

 

青木 そう、レコード屋じゃなくて文房具屋で試聴してるのは僕ぐらいかも(笑)。やっぱりズバ抜けていい音が出るのはホチキスです。僕が今、ライブで使っているのは大きなビンテージの昔のホチキスで。カチャコッ、というようないい音がします。セロテープはコンビニで売っているものが一番いい音がするんですよ、ドラムでいうスネアドラムみたいな役割をします。今回はズッコファミリアのコンセプトにもぴったりかなと思い、ハサミで紙を切る音などもいれています。


美術の時間に制作した版画。みんなが描かないようなイビツな世界が好きだったのかな

――ところでご夫妻は、こどもの頃、絵を描いたり物をつくったりすることはお好きでしたか。

 

Quinka 私はそういうことが苦手なこどもでしたね。ピアノは5〜6歳から習ってたので音楽は好きだったんですけど。


 

青木 僕もそうなんだよね(笑)。でも漫画を自分で描くのが好きで、漫画雑誌を自分でつくって遊んでいました。最初のページには人気漫画のランキングが書かれているんですけど、全て自分が書いた漫画。〈初のランクイン、今週はより面白くなっている!〉なんて書いたり、編集後記もあったりして。

 

――漫画家の先生でもあり編集者でもあるという。

 

青木 読者は妹だけでした(笑)。だけど図工の成績はイマイチで、割と苦手意識を持っていました。

 

Quinka 大人になって陶芸にも挑戦してみたけどセンスがなくて(笑)。

 

青木 僕も陶芸ダメだな。僕の母の実家では代々、有田焼をつくっていて。おじいちゃんが1代目、おじさんが2代目で、従兄弟が3代目という感じで受け継いでいるんですけど。でも母親はピアノや声楽の方に進んだので僕はそっちの影響が強いのかなと思います。とにかくピアノをがんばりなさいと小さい頃から言われていました。


 

――そんなこども時代を振り返ってみて、今の活動に繋がってるなと感じる出来事や思い出は何かありますか。

 

青木 僕が昔、中学の美術の時間にプラスチックを彫刻刀で削ってつくった版画で、今でも覚えているものがあるんですけど。それは街の中をトラックが走っていて、そのトラックの荷台に乗っている山が噴火して街中に火花が散って、でも町の人たちは普通に歩いているという絵でした。その頃からちょっと不条理なというか(笑)、みんなが描かないようなイビツな世界が好きだったのかなと思います。

 

Quinka 私は長女というのもあって親が期待するような絵を描かなきゃみたいな気持ちが強かった気がします。優等生ぶるのに必死だったのかな(笑)。その反動もあってか、高校を卒業して親元を離れた途端にすごく自由になりました。音楽だけじゃなく服や映画カルチャーも大好きだったので、大学時代に雑誌みたいなものをつくっていました。それと同時に大学時代はCM制作の勉強をしていたんですけど。まだ誰もやっていない新しいことをやるのがCMなんだというのを学んで、そこに惹かれました。なおかつ人を魅了する力もあるというのが面白いなと。

 

青木 僕も雑誌をつくっていたし、CM音楽をつくるのも好きだし。ふたりともそういうところは似ていますね。音楽をつくるだけではなく、音楽を使って人に何かを紹介したり、人とダイレクトに繋がるようなことがやりたいという意識が、お互いに早い段階からあったのかなと思います。


 

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PROFILE
青木慶則 あおきよしのり

1993年、17歳でバンド BLUE BOYのドラマーとしてメジャーデビュー。1997年から2017年までの20年間、シンガーソングライター&音楽クリエイターとして、HARCO(ハルコ)名義で活動する。2018年からは本名の青木慶則として再始動。変わらないスタンスで音楽活動を続けることにしている。これまでの曲をすべていったん封印したうえでの新たな展開に、期待が高まる。2018年4月25日に、HARCO後期の代表曲を集めたベストアルバム「BOOKENDS - BEST OF HARCO 2 - [2007-2017]」をリリース。

公式HP

写真/清水奈緒 インタビュー・文/上野三樹

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