ぺんてる株式会社・茨城工場へ。職人の手でつくられる美しい色、人の目で確認される安全性。

こどもが工作したり絵を描いたりするときに欠かせない道具や画材。一体どんな所でどんなふうにつくられているか、考えたことはありませんか? そんなものづくりの現場に潜入する、特集「工場見学」。今回は、絵の具やサインペンでおなじみ「ぺんてる株式会社」の茨城工場を訪れました。

こどもたちに安心して使ってもらうための「安全性検査」

 

絵の具の製造過程を見学した後は、安全性検査について教えてもらいます。ぺんてる株式会社の製品は、こどもをはじめ誰もが安心して使えるように、しっかりと検査が行われています。

 

世界基準の検査をすべての製品に


 

製品の安全性を確認する検査で、最も重要なものが、製品に毒性の強い重金属が溶出しないかを分析する「重金属検査」です。ぺんてるでは「ISO8124-3」という、玩具の安全性に関する国際規格の重金属規制標準をクリアするため、8つの重金属(ヒ素、バリウム、カドミウム、クロム、水銀、鉛、アンチモン、セレン)が製品から溶出しないかを検査します。これは、すべての製品に対して行われます。

 

画材を飲み込んでしまったことも想定して検査


 

まず、検査の対象となるものを細かく砕きます。次に細かく砕いたものを塩酸に入れ、温度を37度にします。これは、こどもが誤って飲み込んでしまった場合も想定し、胃の中でこれら重金属が基準を超えて溶け出さないかを調べるため、胃の中の状態を模しているのです。この溶液をプラズマを用いた分析装置にかけると、溶け出した重金属が元素特有の光を発するため、混入の有無が測定できます。

 

安全性検査も機械とそれを使う人がいて成り立つ


 

今回、安全性検査についてお話ししてくださったのが、画材生産技術室の渡辺一久室長(写真上/右)と新井しのさん(写真上/左)。製造現場の職人さんたちと並んで、安全性検査に携わるスタッフもぺんてるの製品づくりに欠かせない専門家です。

 

バーコードも検査して安全であることを当たり前にする


 

実は、この検査の対象となるのは、画材そのものはもちろん、パッケージやバーコードシールにいたるまで、製品を構成するあらゆるパーツに及びます。「どんな細かいパーツもきちんと検査し、安全なものとして製品を送り出すことができるのです」と、渡辺室長と新井さんは安全性検査の重要性について話します。こどもでも安心して、楽しく使えるために、安全であることは当たり前。それこそがぺんてるの品質なのです。

新しい商品をつくるということ。「ゆびえのぐ」開発秘話

 

さあ、最後に伺うお話は「新しい製品をつくる」ということ。そこで、「エフ水彩」「ぺんてるくれよん」といったロングセラー商品を進化させながら、新しい画材の開発を行っている、画材の開発チームを訪ねました。

 

10年ぶりに誕生した新製品

 

画材では、新しい商品が次々に発売されることは少なく、昔からあるものを改良することのほうが多いのだとか。そんななか、2年前に誕生し、ぺんてるの画材の仲間入りを果たしたのが「ゆびえのぐ」です。絵の具の新商品は10年ぶりだったそう。その開発を担当したのが、黒沢洋介さんと鎌田理沙さんでした。 開発のコンセプトは「こどものためのはじめてのえのぐ」。筆を使わず、直接指や手につけて描くことができるため、まだ筆を持つことがままならない幼児でも、のびのびと絵を描くことができます。しかしそれを実現するために、二人には4つのこだわりがありました。

 

手指につけて使う画材だからこそ安全性にこだわる


 

まず1つめは「安全性」。「ゆびえのぐ」は原料を厳選することで、世界で最も厳しいと言われている玩具の安全性を定めたヨーロッパの基準「EN71」のフィンガーペイント専用基準「EN71-7」をクリア。加えて、重金属検査の基準(ISO8124-3)にも適合しています。小麦や卵といった食物アレルギー27品目も含みません。さらに、肌が弱くても使用できるようパッチテストも実施しました。「パッチテストは通常、化粧品などではよく実施されるテストで、画材で行うのはとても珍しいこと。また、こどもが舐めたり口に入れたりすることが癖にならないように、あえて苦味成分を配合しました。こどもの肌に直接触れ、はじめてつかう画材だからこそ、さまざまな角度から、安全に使えることにこだわりました」と、鎌田さんは言います。

 

こどもでも大人でも扱いやすいカタチにこだわる


 

2つめは「扱いやすさ」。「ゆびえのぐ」の特徴である独特のパッケージ。どこかでみたことはありませんか……? そう、マヨネーズやケチャップの容器です。「ゆびえのぐは思いっきり使って欲しいから大容量がいい」「保育園や幼稚園で先生がこどもの手のひらに簡単に絵の具を出してあげられるような容器」「力の弱いこどもでも、自分で絵の具を出せる容器」……これを叶えるために試行錯誤した結果、たどり着いたのがこの容器だったのです。これなら、大人もこどもも「ぎゅっ」と握るだけで、手軽に絵の具を絞り出すことができます。

 

手指で使う絵の具だから触感にこだわる


 

3つめは「使い心地」。「どろんこ遊びの延長としてこどもが楽しめるように、なめらかだけど、指のあとがしっかりとつくような質感と触感にこだわりました」と、黒沢さん。この質感を実現するために選んだ材料が、化粧品などに使用される国産の「粘土鉱物」。これがスルスルとした「ゆびえのぐ」独特の触感を生み出したのです。

 

こどもが好きな色をラインナップすることにこだわる


 

そして、最後のこだわりが「色のラインナップ」です。「ももいろ」や「むらさき」といったパステル調の色味は、これまでの絵の具の基本色としてはあまりセットに加わることはありませんでした。しかし、「ゆびえのぐ」の開発にあたっては、保育園や幼稚園の先生たちからこどもが好きな色について意見を聞いたり、こどもが好きなアニメの色調なども参考にたりして、パステルカラーも採用。そのこだわりはこどもたちの心を捉え、「ももいろ」「むらさき」の2色はとても人気なのだそうです。

 

絵の具に直接触れて指で描く楽しみを味わってほしい


 

手や指で「ゆびえのぐ」が紙いっぱいに塗り広げられる様はとても美しく、印象的です。こどもたちにとっても、自分の手で直接画材に触れ、色と戯れる体験は、かけがえのないものになるはずです。2017年7月に、私たちズッコファミリアが開催したイベント「紙のコスチュームづくりとおとぎばなしの国のパーティ」でも、「ゆびえのぐ」を使いましたが、こどもたちが夢中になって壁いっぱいに描いている様子が印象的でした。

「大きくなったときに、あれ楽しかったよねって、記憶に残るような体験をこどもたちに届けたい」という、開発者の願いどおり、「ゆびえのぐ」はこどもたちにとって最適の「はじめての絵の具」になっているのです。

 

ぺんてる茨城工場の見学を終えて

ぺんてる茨城工場で、製造現場、安全性検査室、そして商品開発チームの3箇所を訪れ、その丁寧なものづくりにぺんてるの商品が全国の学校や幼稚園、保育園などで使い続けられている理由がわかった気がしました。多くのスタッフが細かく目を配り、その豊かな経験を商品づくりに活かしながら、進化する努力も重ねています。さまざまな人の手を介し、思いを込めて世に送り出された画材は、こどもの豊かな「創作」体験を担う大切なパートナーとして、一人一人の記憶に刻まれていくはずだと改めて強く感じました。ぺんてる茨城工場のみなさま、ありがとうございました。


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写真/永峰拓也 取材・文/ズッコファミリア編集室

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