【インタビュー】ザリガニワークス武笠太郎さんが、娘たちとの遊びで取り戻したものとは?

「コレジャナイロボ」などユニークな玩具の企画開発をはじめ、幅広いコンテンツを発表しているザリガニワークス。その代表を務める武笠太郎さんは、5歳と3歳のお子さんのお父さんです。お仕事と同じくおもしろくて楽しいものづくりを通してこどもたちとコミュニケーションしている武笠さんにお話を聞きました。

言い合えることが大事

――「それは無理」と言うことはありますか?

 

ご飯ができるまでの時間とか、お風呂が沸くまでの短い時間に凝ったものはつくれないので、「それは時間がかかるよ」と言います。けっこうわかってくれて代わりのものを考えてくれるので、なるべく伝えるようにしています。でも、すごくこだわりがあることもあって、そんなときは「検索して画像を見ながらつくって」と言われます(笑)。つくりかけでやめたりすると、「朝までにやっといて」と言われて、朝起きてすぐでも覚えているんですよ。「昨日のは?」って朝イチで納品チェックされて、鬼クライアントですよね(笑)。

あと、僕はあまり絵を描くのが得意じゃないので、キャラクターものを言われると困ります。でも、一生懸命に描けばそれはそれで受け入れてくれますね。また最近は、上の子は5歳になったので、「自分で描いてみて」という方向にうまくもっていっています。


 

――なんでもつくってくれるというのは、なかなかできることではないですね。

 

本当に適当でいいんですよ。僕は立体でつくるのが好きなので立体ですけど、絵でもいいし、ボール紙を切り抜くだけでもいいと思うんです。本質は、一緒になにかやることにあると思っていて。一緒につくったものがどうだとか、失敗だとしても「失敗だったね」と言い合えることとか、そういうことでいいのかなと感じています。


 

――お父さんに「これをつくってほしい」と言いやすい環境をつくるにはどうしたらいいのでしょうか?

 

「こうあるべきだ」ではなく、「こうあるべきだ、なんてことはない」と思って接するようにしたいですね。大人にはこれがなかなか難しいのですが、これができるとその場の環境やこちらの状況をうかがわずにオーダーしてくれるのかなと思っています。

 

――遊びを通してこどもの成長を感じますか?

 

感じますね。絵にしても物事の描き方がどんどん変わっていくのがおもしろくて。人を描くのでも、最初は顔に直接手足がついていたんですけど、それから体を描くようになってきて、見ているところが変わってくるんでしょうね。すごくおもしろいなと思います。


人とのつながりを感じられる暮らし

――現在はアーティストをはじめ、さまざまな移住者が多く集まるという神奈川県の藤野エリアにお住まいということですが、この地を選んだのはどうしてですか?

 

藤野に引っ越してきて1年半になります。ここに来る前から長く住める場所を真剣に妻と探していました。藤野には友達が住んでいる縁もあって、何度か遊びにきていたんです。その友人に藤野を案内してもらう中で、藤野のコミュニティ、人のおもしろさ、自然環境など、子育てをしながら自分たちも楽しく暮らしていくイメージがふくらみ、住んでみようとなりました。


 

――住んでみた印象はいかがですか?

 

すごくいいですね。本当に。都心からは少し離れるので不便では?と聞かれる事も多いですが、不便ってなんだっけ? そもそもの便利ってなんだろう?という気持ちになります。人と人とがつながっていて、みんな助け合って、楽しみあって、なににも代えがたいものがありますね。

移住者が多いのも関係してか、イベントがすごく多いんですよ。それも住んでいる人たちで企画運営するんです。僕もいつの間にか「のらっちぇ くらっちぇ」というこどもが遊べるイベントを主催しています。今年で参加して2年目になるのですが、去年は体育館の中いっぱいに段ボール工作をしました。


 

お仕事の関係で大きな段ボールが手に入るお父さんに持ってきてもらって、こどもは大きなダンボールのお城をつくったり工作三昧、大人はお茶を飲んでおしゃべりしたりして一日すごします。今年はこどもにはイベントで使える通貨をチラシにつけて、これを持ってきてくれたらみんなで遊べる企画を考えています。


遊びを通して取り戻したものとは?

――最後の質問になりますが、武笠さんはこどものころ、図工・美術が得意でしたか? また、こどものときの自分が、お父さんとなった今の自分に、影響を与えていることなどありますか?

 

得意かどうかはわかりませんが、とにかく好きでした。ずっとなにかつくっていました。祖父の家などへ出かける際にも重たいセロハンテープの台をかばんに入れて持ち歩いているような子でした(笑)。

そして現在、こどものためにつくるようになって、そこにまた戻った感じがありますね。

デッサンの勉強をして、美術の大学に行って、メーカーに入って、ものづくりの仕事をして、一応それらしくやってきましたが、こどもと接する中で、あのころの工作でいいんだみたいな感じに戻ってきたんです。それは「こうあるべき」から遠くあって、適当でいいし、どんどん切って貼ってつくって「できた!」、みたいなものづくりです。いまはそれが楽しいですね。


 

  1. 1
  2. 2
PROFILE
武笠 太郎 むかさ たろう

1973年、神奈川県藤沢市生まれ。多摩美術大学卒業後、玩具メーカーの企画を経て2004年独立。同年、大学時代からの友人である坂本嘉種と共に有限会社ザリガニワークスを設立し、玩具の企画開発をはじめ、さまざまなコンテンツを発表。最新作は、こどものためのビアマグ「BEER MUG FOR KIDS」と、中身を取り出したあとの空カプセルにパーツを接続して遊べる玩具「カプセルアドベンチャー」。 有限会社ザリガニワークスFacebookページ

INFORMATION
取材協力:篠原の里

廃校になった篠原小学校の校舎を再活用した複合施設。宿泊室や研修室、食堂では「里カフェ」(金曜日開店)あり、近隣のこどもたちが通う保育園も併設していて、にぎやかな声が聞こえてきます。校舎も校庭もなつかしく、里山の風景にとけ込んで和やかな気持ちになれる場所です。

NPO法人「篠原の里」Facebookページ

〒252-0186 神奈川県相模原市緑区牧野2881 番地

写真/袴田和彦 インタビュー・文/伊部玉紀

top

FOLLOW US

公式SNS