【インタビュー】デザイナー・小林幹也さん「自分が楽しむ姿を見せることで、興味の世界を広げるきっかけをつくりたい」

家具、プロダクト、インテリア空間、さらには新小学生向け通信教育教材のプレゼントまで、幅広いフィールドでデザイン、ディレクションを手がけるデザイナーの小林幹也さん。お子さんが生まれて以来、形やディテールなど、デザインするものの着眼点が変わってきたと話します。4歳になる娘さんと交わす“作為のないコミュニケーション”から気づかされることとは——。東京・目黒区にある小林さんのオフィス兼アトリエでお話を伺いました。

日に日に成長を感じる、毎日のお絵かき

 

——日本国内にとどまらず、海外にもフィールドを広げてご活躍ですが、独立から現在まで、どういったキャリアを重ねてこられたのでしょうか?

 

僕は美大を卒業したあと、インテリアデザインの会社に1年間ほど勤め、2006年に独立しました。最初は国内の建物内部や室内の空間デザインがメインでしたが、徐々に家具や日用品のデザインやディレクションをする仕事が増えていきました。海外だと、現在はデンマーク、スペイン、フランス、ベルギー、イタリアなどヨーロッパ企業のプロジェクトに携わっています。クライアントワーク以外にも、オリジナルブランド「TAIYOU&C.」や今夏からスタートするライフスタイルブランド「IMPLEMENTS」の制作も行っています。

 

——日々お忙しいかと思いますが、オンとオフはどのように過ごしていますか?

 

基本的に曜日関係なく週二日休みをとるようにしています。その時々のプロジェクトによって変わりますが、週の半分はこのアトリエでデスクワーク、それ以外はクライアントの制作現場に行っていることが多いです。製造業は地方に工場が多いので、ほぼ毎週どこかしらに出張しています。家具などのデザイン画を描いて送れば、あとは職人におまかせというより、その画を元にどんなものをつくることができるかを、工場で作業する職人たちと会って話しながら進めていくので。
仕事終わりが遅かったり出張があったりすると、どうしても娘と過ごす時間が少なくなってしまうので、平日ふだん通り東京にいるときは、出勤前に自転車で娘を幼稚園に送り届けるのが僕のルーティン。家から片道20分弱かかるので、朝からなかなか良い運動なんですが(笑)。


 

休みの日は、娘と一緒に出かけることが多いですね。公園、海、動物園、サッカー観戦とか、いろいろ。うちの会社には年間を通して4~5人、ヨーロッパからの研修生が来るので、その子たちも一緒に連れて行って娘と遊んでもらうことも。いろんな場所、もの、人に触れさせたくて。

 

遠出をしない時は、このアトリエに連れて来ることもよくありますよ。そういう時は、自分が仕事をしている隣で、娘は熱心に絵を描いていますね。最近はハートとリボンを描くのにハマっているようです。娘が2歳くらいの頃から、描いた絵を全部オフィスの引き出しにストックしているのですが、それを見ていると、同じモチーフでも描きかたに変化が見えておもしろいですよ。ちょっと前までは人の顔を描くと目が1つだったけど、最近は2つになって、白目と黒目もちゃんとあって(笑)。絵ひとつとっても成長が見えますね。


 

ちなみに、ここにある段ボールハウスは、娘の「家が欲しい!」というリクエストで僕がつくりました。ちょうど娘をアトリエに連れて来ていたときに仕事で手がけた椅子が大きな段ボール箱で届いたので、それを使って、その場で。出窓や吹き抜けもあって、なかなかいい家なんですよ(笑)。今はこの“家”にも絵を描いたりテープを貼ったりと、デコレーションを楽しんでいるみたいです。(インタビューを受ける小林さんの横で次々と絵を描いていくお子さんを見ながら)こうやってみんなの前で躊躇せず、恥ずかしがらずに、描きたい絵を書けるって、こどもってすごいですよね。この子に限らず。


原体験は「書道」。バランスゲーム感覚だった

——小林さんご自身がこどもの頃は、どんな「つくる」「描く」体験をしていましたか?

 

僕がこどもの頃は、親の方針でいろんな習い事に行かされていました。幼稚園の時にピアノ、合気道、スポーツ系のものとか。よく覚えていないのですが、ある時、習い事から僕が帰って来なかったことがあったらしいんです。どうやら自分でやめて、幼稚園の絵画教室に申し込んで参加していたそうです。4歳くらいのときのこと(笑)。やっぱり何となくその頃から好きだったんでしょうね、描くのもつくるのも。

 

唯一親にやらされた習い事で続いたのは、書道。物心ついた頃から20歳まで続けていました。例えば半紙に4つの文字を書く時、最初は上手く書けなくて一字目でうまくかけないと「ダメだ」と、すぐに捨ててまた新たに書き直していました。それが、段々と全体のバランスが重要だということがわかってきて、楽しくなっていったんです。一画、二画目が大きすぎたなと思っても、残りの文字でバランスを取ればきれいになるとか、線(文字)を書くことで、余白の白がきれいに見えてくるとか。誰かに言われた訳ではなく、こどもの感覚としてそういうことを掴み取っていたんでしょうね。


 

書道は僕にとってバランスゲーム感覚で、とても楽しかったですね。長時間正座して書くのもまったく嫌ではなかった。余談ですが、独立したての頃、母が僕の個展に来ていた時、お客さんに「幹也のバックグラウンドは書道です」って勝手に言っていたこともあったりして(笑)。確かに、今となっては書道の原体験がデザインの仕事に影響している面も大きいのかなと思いますね。

 

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小林幹也 こばやしみきや
デザイナー / ディレクター

1981年東京都生まれ。2005年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。インテリアデザイン会社勤務後、MIKIYA KOBAYASHI DESIGN設立。家具、プロダクトからインテリアデザインまで幅広く携わり、国内外のクライアントとともにデザインを提案している。2010年 ドイツのiF product design awardにて金賞、ドイツred dot award、グッドデザイン賞、adc賞など受賞歴多数。2011年にはショップ「TAIYOU no SHITA」をオープン。2012年株式会社小林幹也スタジオ設立。2018年7月に個展を開催予定。同時期に直営ショップ「IMPLEMENTS」を東京・碑文谷に移転オープンする。

小林幹也公式HP http://www.mikiyakobayashi.com

TAIYOU no SHITA HP www.taiyounoshita.jp

IMPLEMENTS HP www.implements.jp

写真/阿部高之 インタビュー・文/木下美和

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